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あの夏をもう一度・再

【投稿】
ポケノベ夏企画2010投稿作品
Aコース
探検、ポケモン必須
 そびえ立つ入道雲に向かって白色の小さな軽自動車が田舎道を直進していく。
 去年免許を取った後に買った軽自動車は、ちょっとした振動でもすぐに伝わるからちょっと怖いがそれでも大事な相棒だ。
 この田舎道は前も、そして右も左も田園風景。飽き飽きしているのは運転手のおれだけでなく隣の助手席にいるエレキブルもだろう。
 狭苦しそうにしているエレキブルをボールに戻しても良かったが、久しぶりの帰郷なので風景を楽しんでもらいたかった。しかしどうやらそうもいかないようで。
 誰がみてもかなりの年期の入った日本家屋の前で車を止める。エレキブルを強く締め付けていたシートベルトを外してやってドアを開けると逃げるように車から出、少し放電しながら大きくのびをしていた。
「おぉ、お帰り。思ったより早う着いたやんか」
 エレキブルに遅れて車を降りると、麦わら帽子を被り、首には真っ白のタオルをかけた親父が声をかけてくる。
「高速が以外と空いてたからね。おかげでまだまだ明るいうちに着いたよ」
「今回はいつまでいるんや」
「十日はいるつもり」
「そうかい。まあ疲れただろうから麦茶飲みぃな」
「そうするよ。家(うち)には母さんも淳もいるんだろ?」
「淳はまだ畑やね。兄ちゃんが帰ってくるから自分で作った美味しい夏野菜食べさせたる言うてまだ畑おるき」
 こんなに早く帰って来たせいで、家に残って農作業をすることを決めた弟にはすまないことをしたなと思った。
 それからちょっと喋って父さんと一緒に家の中に入ったが、父さんにエレキブルの腕を叩きながら逞(たくま)しくなったなと言われて照れてるエレキブルが印象的だった。
 居間でお茶を飲んで、母さんと少し喋ってから特に荷物も持たずに家を出た。



 帰省する度に欠かさずやっていることがある。
 それは家からすぐ行くとある山に探検しに行くことだ。と言っても山登りをするわけではなく山の途中辺りまで行って特に何もせずに帰ってくるだけで、何の意味もないように思われるかもしれない。しかしおれとエレキブルには大事な用である。
 なぜならそこの山でこのエレキブルと、当時はエレキッドだったが初めて出会った場所なのだ。
 初心に帰って気を引き締めるにはこれ以上ない。しかし今回はそれ以外にも目標がある。
 大学ではポケモンバトルのサークルに入っている。そこでプロの有名ポケモントレーナーと交流試合をして負けたとき、センスはある。と言われたおれだが、最近はさっぱり白星がない。どれも僅差で負けてしまう。しかも前まで勝ち続けていた相手にもだ。何がダメなのか、きちんとそれを見つけたかった。
 久しぶりに入った山は昔と微塵も変わっておらず安心した。向かいの村では開発の手が加わっていたりと田舎も安心出来ない近頃なのでもしかしたらここも、と思っていたがまだ大丈夫のようである。
 木と木を渡り歩くエイパム、その頭上には数多くの鳥ポケモンと足元には草、虫ポケモンたちが毎度変わらず跋扈している。
 あぁ、やっぱりここはいいな。エレキブルも同じく悦びを全身で感じている。
 そんなときふと、この山に来る前父と交わした会話を思い出す。
『そういえばまたあの山行くんかい?』
『うん』
『お前もそろそろセレビィと会えたらええね』
『セレビィ? あの時渡りの』
『そうやぁ。昔はそれなりに見かけることもあったんやけどねぇ。あの山何度も入ってるんやったら祠かなんか見たことくらいあるやろ、あれはセレビィ祀っとぅもんや。困ってるんやったらなんか頼んどき』
 そういう類の話を聞いたのは初めてのような気がする。バトルは神頼みでどうにかなるものではないが、縁起ものだ。祠の場所なんて覚えてないけど適当に歩いていればあるだろう。おまけ程度に考えておく。
 山を行く歩みを続けているとリングマが前方からやって来た。このリングマとはこの山で何度も戦った戦友だ。何度か仲間にスカウトしたが首を横に降って拒否を意する雄叫びをあげられた。
 今回もおれたちと勝負をしたいのだろうか、いつでも来いと言わんばかりに構えている。
 周りのこの山に住む野生ポケモンも様子を見るかのように円になってこちらの様子を見ている。ならばやるしかないな。エレキブルの後ろに立ってリングマと視線を合わす。このリングマと戦う最適な戦法は整えてある。そしてワザそ仕掛けるタイミングはここだ。
「エレキブル、まずは雷パンチ!」






 木と木の狭間から太陽の光が零れて丁度いい心地よさを醸し出している。太陽が沈むにはまだまだ時間がかかるようだ。
 草と土のベッドはいい匂いはしないが気持ち良かった。
「すまんなエレキブル」
 おれの隣で同じように大の字になっているエレキブルに語りかける。エレキブルは悔しそうに唸り声をあげた。
「リングマ、また強くなってる」
 まったくだ、と言いたげにエレキブルは鼻を鳴らす。
 おれたちの攻撃はことごとくかわされ、そう。一手先を読むという言葉がこれ以上ないほどに当てはまる程だった。
 ワザが当たらなければダメージは与えられない。いい感じのカウンター攻撃を何度か食らってエレキブルはノックアウト、リングマはまだ物足りなそうに帰って行った。
 正直ショックだった。
 リングマには何度も負けたことがあるが、ここのところは勝ち続けていて、しかもこの一年おれたちはワザの鍛練、効率の最良な作戦をひたすら考えてきた。だがそれで他のトレーナーに負けるならまだしも、いくら戦友とはいえ野生のポケモンだ。リングマに負けるのは今までになく悔しかった。
 なにより、それをただ後ろから見ることしか出来なかったということに。
 そんなことを考えていたためエレキブルが気を取り戻すまでちょっと涙目になっていた。
「っ、よいしょ!」
 転がしていた体を起こして髪や服についた砂を払う。しかしこれは帰ったら洗濯だな。……そういえば昔はよく泥んこになって遊んだっけ。何故かそんなことを思い出す。
 エレキブルも体を起こすと背中の毛についたものを払ってやる。ときたま体毛から電気が流れるが、それくらいなんともなかった。
 気づけば偶然か、すぐそばに小さな祠があった。これがセレビィのものかどうか分からないが、念のために御参りしておく。
 バトルの調子が良くなりますように、と。しかし祈ってから気づく。セレビィは時を渡るだけであって願い事を叶える神様じゃないんだよね。
「……帰るか」
 リングマとのバトルで負けたのはもちろん、セレビィまでにこんなことを祈るなんて、と思うと更に惨めになった。本当に何がダメなんだ? 分からない。思考は出口を探して往々するだけだ。
 いや、思考だけではなく、山からも抜けれないようだ。辺りはすっかり暗くなっていた。しかし久しぶりとはいえこの山に来ているからここは庭のようなもの。迷うわけがない。おそらくは夜にやってくるゴーストタイプのいたずらか。ゲンガーの入ったモンスターボールに手を伸ばし、いたずら者を仕留めてもらおう。そう思ったとき子供の声がどこからか聞こえた。
 木の陰に隠れて声の主を見ると、間違いない。そこには子供のときのおれがいた。どういうことだ、ゴーストタイプのいたずらでここまで可能なのか。とりあえず様子見だ。エレキブルには戦闘準備をしてもらって控えてもらう。
 一方の子供のおれの目の前にはあのリングマがいた。今よりもまだほっそりしているイメージがあるが、それでもなお一般的なリングマより力があった。
 そして子供のおれの隣にはまだ小さかったエレキッド。
 当時のおれは誕生日に買ってもらったモンスターボールを持ってエレキッドと共に山に入り、そのころから既に山の暴君として有名だったリングマを捕まえようとしていた。
 エレキッドは仲良くなってから捕まえたポケモンであるから捕獲に難を感じてなかったため、調子に乗って攻撃を一切せずにリングマにモンスターボールを投げたのだ。もちろんその時のおれに弱らせた方が捕まえやすいなんてことは一切頭にないだろう。
 しかしリングマはそのモンスターボールを右手で軽々しく弾く。それにムキになった子供のおれは持ってたボールを全て投げたがどれも弾かれ使い物にならなくなってしまった。
 怒ったリングマが今度はこちらの番と攻撃をしかけた。腕を高く振り上げてのアームハンマーだ。
 それを見ていたおれもエレキブルも危ないと思ったが、意外にも子供のおれとエレキッドは二人して懐に入ってパンチを繰り出した。まだ威力は対したことはないのだが不意を衝かれたリングマには効き目バッチリだ、そのまま体のバランスを崩して尻餅を打つ。
 あぁ、このとき初めてバトルが好きになったんだ。そして好きで好きでしょうがなかったんだ。あのドキドキと臨場感に惹かれたんだ。
 子供のおれたちがリングマに追撃しようとしたとき、リングマは尻餅をついた体勢のまま地面にアームハンマーを放つ。その衝撃で辺りは揺れ、子供のおれとエレキッドは転ぶ。そしてリングマは立ち上がると、そのおれたちに背を向けて山奥へ歩き出した。
 そうだ、今のおれに無いのはこういう野性的なモノと根性だ。いつの間にか勝つことだけにこだわるようになっていたため、勝負をより安定に勝つことを求めるようになっていたから本来の自分が出せなかったんだ!
 そこで唐突におれの視界がぐにゃりと歪んだ。子供のおれも、エレキッドも、山に戻るリングマも、そして山も歪んで潰れて消えて行く。
 代わりに目の前に現れたのはさっきエレキブルと横になっていた場所だ。幻は解けた感覚を何故か持っている。さっきのはなんだったのかを反芻しているとエレキブルに肩を叩かれた。
 その焦りようから何かあったのかと心配していると、エレキブルはしきりにどこかを指差している。その先を目線で追うと緑の影。その影はすぐに木々に命を与えながら姿を消して行った。
 まさか、聞いていたがこんなことがあるなんて。
「セレビィ……」
 おれはその影の主の名前を呟いたまま、伝説のポケモンと出会えたことへの喜びや、あのときの興奮、そしてそれを思い出させてくれたことなどへの感謝などという感情がしばらく込み上げてきて動けなかった。



 翌日朝からご飯を食べるとそのまま身支度だけ整えてエレキブルと共に再び山に向かった。するとまるでそれが分かっているかのように、山に入ってすぐリングマが現れる。
「さあ勝負だ!」
 この言葉が合図となり勝負が始まる。リングマ先制のアームハンマーに対し、おれとエレキブルは目で合図してリングマの懐に潜り込み共に強烈なパンチを浴びせてやった。



【コメント】
実はこれが一番お気に入り。
そしてタイトルみれば分かりますが、企画スレに投稿してあるやつとは違うバージョンで、ところどころ話をいじってあります。企画で突っ込まれたとこの修正を加えてありますが……。
で、何がお気に入りかっていうとこの小説全体の雰囲気。
こういうのいいですよね。え、知らん?
そしてこの設定が気に入ってます。
なんかわたしらのいる現実世界とポケモンの融和、こういう感じの小説が一番好きなんですよ。だからポケカシリーズは現実世界が舞台なのかな。
もう一度この設定で短編書きたいです。いや、いつか書く。
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[ 2010/09/03 00:05 ] 小説 | TB(0) | CM(0)
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